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【感想】そりゃわたしは水商売のマリに想いを馳せる『天国までの百マイル』

1冊目。『天国までの百マイル』

 

天国までの百マイル (講談社文庫)

天国までの百マイル (講談社文庫)

 

 

 

数年前、同期のマッキーに最近どうよ、ときかれて私は「失恋した!!」とこたえた。

そう。密かに思いを寄せていた人が結婚してしまったのだ。

これ以上好きになれる人はいないと思ったのに。

 

やさしいマッキーはさらっとこう言った。

「いちばん好きだと思った人とは、結ばれないんだって。」

 

その時、妙に納得した。

むしろ一途に恋ができたことは、幸せで嬉しいことだったのだと、

ほんとうに妙だけど、納得した。

 

次は自分にとってもっと幸せな恋愛ができる気もした。

(実際、しばらく後に出会い、お付き合いをし、結婚をしたのが今の最愛の夫である)

 

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『ヤッさん。あたしほんとにヤッさんのこと、好きだよ。たぶん、男の人をこんなに好きになることなんて、もう一生ないと思う。』

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浅田次郎の『天国までの百マイル』は落ちぶれた主人公と、その母の心臓病をめぐる感動的な作品。読んだ人がどこに感激し、涙するかは、人それぞれかと思うが、

 

私はマリのこのセリフで胸がキュウウとなって、あの時のマッキーの言葉を思い出した。

 

「いちばん好きな人とは、結ばれない。」

世界の一部の人のところへやってくる、小さくて不思議な法則。

でも受け入れれば今度は、人を大いに愛することができたことを幸福に思うようになる。

愛されることではなくて。人を愛せることが幸せなのだと。

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水商売のマリは、自分から愛するヤッさんのもとから姿を消してしまった。

明るくて一番ヤッさんを想っていたマリが姿を消した。

 

「いちばん好きな人とは、結ばれない。」

マリはこの法則を知っていただろうか。はじめから心で感じ取っていたのだろうか。

 

きっとわかっている。

そして心の中で、一人の男性を一途に愛することができた幸せをかみしめている。

 

そんな風に考えないと読み終わったあとの切なさがなくならない。

そんな風に考えてもマリに思いを馳せると、

やるせなくてやるせなくて、悲しみのドキドキが止まらないのでした。

 

読書嫌いの読書スタート。よいスタートとなりました。

 

天国までの百マイル (講談社文庫)

天国までの百マイル (講談社文庫)